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遺伝子が体内でうまく働くためには、細胞の中に入らなければなりませんが、遺伝子は、そのままでも細胞に近づくことはできますが、細胞の中に入っていくことはできません。遺伝子治療薬には、細胞膜を突破し、細胞の中に遺伝子を運ぶ役目をする優れたベクター(運び屋)が必要になります。
HVJは、1950年代に日本で発見されたウイルスです。このHVJの中のゲノムを全て除去し、膜のみを用いるベクターがHVJエンベロープベクターです。このベクターの製造方法が、2000年に大阪大学大学院の金田安史教授により発明されました。
HVJエンベロープベクターは、膜に細胞を融合(細胞融合)する作用があることから、遺伝子を細胞に導入する効率が高く、しかもウイルスゲノムが全て除去されているため、ヒトに対する安全性も高いベクターです。遺伝子治療に用いるベクターは、主にウイルス性ベクターと非ウイルス性ベクターに分けられます。ウイルスの感染能力を利用するウイルス性ベクターは、導入効率は高いが安全性の面に問題があり、脂質材料などによる非ウイルス性ベクターは、安全性は高いものの導入効率の面に問題がありました。HVJエンベロープベクターは、既存ベクターの持つこれらの問題点が解決されているため、汎用性が高いベクターになる可能性があります。
HVJエンベロープベクターは、遺伝子治療薬への応用のほか、核酸医薬や蛋白医薬、さらに低分子化合物など従来からある医薬品の薬剤吸収を向上するドラッグデリバリーシステム(DDS)として有効である可能性があります。
また、HVJエンベロープベクターは、創薬や診断薬に利用できる新規有用遺伝子を発見する研究にも用いることができます。ベクターにより調べたい遺伝子を細胞や臓器に導入し、実際にどのような影響が出るかを観察することで新規有用遺伝子を見つけることができます。
■HVJエンベロープベクター活用概念図
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